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ジャパンインターナショナルボートショー2025 担当者インタビュー「ホンダ」

担当者に直撃インタビュー! ホンダのV8エンジン搭載船外機「BF350」を深掘り!

本田技研工業株式会社
二輪・パワープロダクツ事業本部
パワープロダクツ事業統括部 マリン事業部 事業企画課
課長 チーフエンジニア
髙橋 能大様

本田技研工業株式会社
二輪・パワープロダクツ事業本部
パワープロダクツ事業統括部 マリン事業部 事業企画課
課長 チーフエンジニア 髙橋 能大様

高い動力性能や優れた経済性で高い評価を得ているHondaの4ストローク船外機「BFシリーズ」。同シリーズにおいて最大出力となる350馬力を発揮する新型船外機「BF350」について、マリン事業部の髙橋能大さんに詳しくお伺いしました。

よろしくお願いします! まずは「BF350」の概要を教えていただけますか?

ホンダで初めて量産することになったV8エンジンが、この「BF350」です。自動車では最大でもV6でしたが、やはり350馬力を出すにあたってはV8まで拡大する必要があったんです。
今回のボートショーでは、フィンランドのメーカー「AXOPAR(アクソパー)」と、メルセデスなどを手掛けるチューンアップメーカー「Brabus(ブラバス)」がコラボレーションした特別仕様モデルに、当社の「BF350」を搭載した形で展示を行っています。

開発にあたっては、どのような理念や目標を掲げていたのでしょうか。

ホンダのエンジンが定評を得ているのは、耐久性と燃費の2点です。「BF350」を開発するうえでも、そういったこれまでの評価、ご期待に応えられるものを目指しました。特に燃費に関しては、「BF350」はレギュラーガソリン指定であることもあって実際のランニングコストではかなりの差を体感いただけるものになっています。

特に注力した技術的なチャレンジや革新的な部分はありますか?

V6エンジンから派生した形ですが、「BF350」ではV6エンジンのVバンク(60度)のままで2気筒を足してV8エンジンにしています。作りやすさでいえば、V8エンジンはVバンクを90度にするのが一番良いのですが、それではエンジンの幅がどうしても広くなってしまいます。そうなるとエンジンを複数搭載するのが難しい船が出てきたりするので、なんとかVバンクを60度のままにできるよう工夫しました。
もう一つ、重要なコンセプトとして掲げたのが「船に乗っている方々の会話を妨げないエンジンにしたい」ということでした。クランクピンオフセットを60度とすることで、バランサーなしで1次慣性力、1次慣性偶力を完全にキャンセルできる構造を採用するなど、設計上の工夫を重ねることで低騒音・低振動のエンジンに仕上がっています。これだけ大きなエンジンでありながら、4000~5000回転のクルーズ領域では、エンジンから1~2mほどの近さでも声を張らずに会話ができるくらい静かなんですよ。

ホンダの船外機が他社製品と比べて優れている点や独自の特徴は何でしょうか?

先ほどお話したように、燃費の部分と耐久性・信頼性を挙げたいと思います。ホンダのエンジンは、アメリカの沿岸警備艇に搭載されているんです。有事の際にはエンジン全開で船を走らせ続けることもあるわけで、非常に激しい使われ方をするケースもままあると考えられます。そういった機関で採用されているのは、弊社の船外機が高い信頼性を得ていること裏付ける一つの事例だと言えるのではないでしょうか。

確かに、ホンダのエンジンに対する信頼性がうかがえますね。次の質問ですが、自動車やオートバイで培った技術を船外機にどのように応用していますか?

やはり燃費の部分ですね。四輪の部門では0コンマ何%という単位で燃費の改善を積み重ねてきています。そこで培った最新の低燃費技術を、我々マリン部門でもエンジンを新たに開発する際には取り込むようにしています。

「BF350」はどのようなボートオーナーや使用状況に最適だと考えていますか?

メインはプレジャーボートで、特にアメリカやヨーロッパのプレジャーユースがターゲットになってきます。中でも、ほとんどがアメリカ市場ですね。
それ以外でいうと、耐久性や信頼性に強みがありますので、プロユースも想定しています。プロユースというのは漁師さんもそうですし、観光用業務艇での利用も含まれます。タイやインドネシアなどの観光地で、本島から離れたリゾートアイランドに向かうタクシーボートというものがありますが、30人くらいのお客さんを乗せて、離れた島まで運ぶんです。そういった船は、毎日6時間くらい全開で走るようなことを1年中続けています。そういうところでも我々のエンジンを信頼して使っていただいています。

環境への配慮という意味では、具体的にどのような取り組みを行っていますか?

2030年に向けて、電動商品の量産機を出していきたい思いがあり、電動化に関して、小型の領域ですけれども実証実験を進めているところです。今後の電動化の検討に向けて、実証実験の経験をフィーバックしていこうと考えています。
ただ正直なところ、バッテリーの性能が追いついていないのが実情。現状では、船が沈んでしまうくらいの量のバッテリーを載せないと使い物になりません。現実的にはまだまだ船の世界では内燃機関が必要になってきますので、四輪で培った低燃費の技術に磨きをかけると同時に、バイオ燃料やe-fuel(合成燃料)といった再生可能な燃料の活用も広げていきたいですね。

髙橋さん、取材にご協力いただき、ありがとうございました!

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